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【コラム】機材と配線と編集判断——リプレイヤー(ハイライト選定)という職種の輪郭

eスポーツの配信を見ていて、試合直後にハイライトが流れてくる、あれを見たことがあるでしょうか。あの音声、誰がどんな機材で作っているのか。
GLOEでは、そのポジション(=当日のオペレーション担当)を「リプレイヤー」と呼んでいます。現場では聞きなじみがありますが、一歩外に出るとまだ輪郭の薄い職種です。
今回はその職種の輪郭を、スポーツ中継のリプレイも現役で行っている藤田(写真右、※)が機材・配線とハイライトの基本思想を、いま現場で回している横田が実運用のリアルをお知らせします。
※藤田はGLOEの現場ではテクニカルディレクターとして入っています。

0.スポーツ中継とeスポーツの現場の違い(藤田)

一番大きなポイントはVTRディレクターの有無です。
野球・サッカー・バスケのトップリーグのスポーツ中継では、カメラが10台あります。一人で10台分の映像は見られないので、リプレイヤーだけでも3人います。試合中のスローリプレイを出すにあたって、VTRディレクターは「どのタイミングで、どのリプレイヤーが担当しているカメラの映像を出すか」を指示します。試合後のハイライトリプレイの作成でも、VTRディレクターとリプレイヤーが相談してシーンを決めます。
一方でeスポーツの現場は、ハイライトリプレイがほとんどを占めています。しかもVTRディレクターがいないので、リプレイヤーが裁量をもってハイライトリプレイを作成します。そのためリプレイヤーの力量がモロにハイライトのクオリティに直結します。

1. eスポーツ配信のリプレイヤー機材


リプレイヤー席は、本配信のテクニカルディレクター席とは別に組まれ、基本的に席が個別に設けられています。リプレイ専用の機材があり、スポーツ中継で使われているものと同様の3Play(スリープレイ)というものが使用されます。
そのほかの機材の構成として、チームゲームなどの大会配信だと、以下のような構成で機材を組んで、複数のボイスチャット音声を録音し、ハイライトに反映できる構成にしたりします。音はリプレイ機材側でMIXさせます。

上記の構成かつ後述する横田のおすすめハイライトは 獅白杯3rd / Day1になります

2. ハイライトの切り出しの考え方

eスポーツの現場におけるリプレイヤーの仕事はマッチ中に編集して、マッチ後にハイライトを出すのが基本です。単に出して終わりではなく、「これを切り抜いて視聴者に楽しんでもらえるか」を軸に、演出として提案するのが重要だと思っています。
切り抜きは「上手いプレイの抜粋」ではありません。プレイの上手さだけなら試合中ずっと続いていますが、それを全部並べても視聴者の心が動くとは限らない。出演した人や視聴者の感情が大きく動いたシーンをセレクトして、インターバル中でも熱が冷めないように楽しんでいただく——これがハイライトの本来の目的です。技術的に高度なプレイでも、その試合の物語の中で意味を持たなければ、ハイライトとしては弱く、逆に技術的にはシンプルでも、その一手が試合を決めたのなら、ハイライトとして強いという整理です。
それらを踏まえてハイライト選定判断の軸は大別して3つです。

1. 感情が動いたか(選手・観客・自分の感情のどれかが弾けた瞬間)
2. 物語の転換点になったか(試合の流れが切り替わった瞬間、勝敗が動いた瞬間)
3. 玄人目線で面白いと思える箇所(ゲームをやりこんでいる人が見て「わかっている」とうならせるような箇所)

3について:
FPSのチームゲームでは、目立つ動きをしていなくとも「その人が支えていたから勝った(ラウンドが取れた)」という場面もハイライトになりますし、格闘ゲームではフィニッシュまでに読み合いの文脈があればその読み合いもハイライトにすべきだと考えています(起き上がりに毎回投げを重ねていたけど、最後だけ打撃でKOになった時はそれまでの投げもハイライトに乗せるなど)

eスポーツの現場のハイライトにおいて、この判断は誰かにマニュアル化されているわけではなく、その日その試合で自分が決めます。リプレイヤーごとに切り口が違って、誰が切り取ったかで、視聴者が思い出す試合の姿が変わる。そこがこの仕事の面白いところだと思っています。

3. 実際にどう作っているか 

ここまで藤田が話したのは、リプレイヤーとしての理想的な切り抜きの話です。ここからは横田が、実際どうやって作っているかを紹介します。

1. 音の聞き分けから最終チェックまで

3Playの操作の基本はこのクルクルするやつで右手でシークバーやカーソルを動かし、左手で編集のキーを操作します。それぞれの入力系統からの画音は並行して3play内に録画されています。

編集中の音の聞き方は少し変わっています。イヤホンを右耳だけに刺して、編集中の音を聞きます。左耳にはインカムを付けて、そこで本配信の音(プログラムOUT)を流します。スタジオのスピーカーからも本配信の音が出ているので、それも含めて聞いています。
編集中は早送りしたり細かく行き来したりするんですが、そのあいだも左耳で本配信を聞いていて、盛り上がったところがあればクリップ候補として確保します。
編集が終わったら、通しで観直して最終チェックをします。クリップとクリップのつなぎ目で映像が急に切り替わっていないか、音声が変に途切れていないか。ハイライトはテンポで見せるものなので、切れ目の違和感がひとつあるだけで視聴体験が落ちてしまいます。

2. 候補は無限、尺は5分

配信中はプレイデータが全部録画されているので、素材そのものは膨大です。候補になるシーンが山ほどある中で、「これは入れる/これは落とす」の判断を短い時間で続けていくことになります。全部入れたくなっても、どこかは削らないといけない。この判断を短時間でやり続けるのが、一番神経を使う工程かもしれません。
最初のころは「これでいいのかな」と悩んでいるうちにどんどん時間が過ぎて、「出さなきゃ」って焦ることが多かったです。慣れてくると、聞きながら「ここ絶対入れよう」と決まっていくようになります。連続で試合があるわけではないので、集中して編集して、終わったら次を探しに行く感じで、悩んで手が止まる時間が減ってきます。
尺の縛りは、逆にやりやすくもあります。「5分で作ってください」と指定されると、序盤・中盤・終盤で何クリップ入れればいいか目安が立ちます。「この辺いいけど、尺から外れそうだな」と思ったらハイライトに入れない、という判断もしやすくなります。

3. リプレイヤーの困りごと困りごと3選

①作っているときに困るのは、ゲーム映像とDiscord音声のタイムラグが発生するパターンです。普段YouTubeで投稿されている、いわゆる切り抜きとは形式が異なってしまうので悩みやすいポイントです。
一方で、ずれることで生まれる面白さもあります。倒す瞬間で、ディレイのおかげで先に相手のやられた声が乗って、そのあと「やった!」という声が乗る。狙って作れるものではないですが、こういう偶然が生まれるのはオンライン大会のVCありの現場ならではです。

②もう一つ悩ましいのは、一方的な試合になったときです。VALORANTだと1試合30分弱の中で「5分のハイライト作って」と言われても、片側がずっとやられている試合だと、入れたいシーンが少なくなる。全部が一方的にやられた場面になってしまって、そこはやっぱり難しいです。

③そして、休憩時間の短さも常に困りごとです。ハイライトは試合直後(休憩中)に出すので、次の試合が始まるまでのわずかな時間で仕上げなければなりません。ちょっと悩んだりトラブルが挟まったりするだけで、あっという間に「出さなきゃ」というタイミングが来てしまいます。

結び

GLOEでは「リプレイヤー」という独立した職種はなく、テクニカルディレクターの守備範囲にある機能の一つとして誰かが担っています。藤田が話した切り抜きの思想と、横田が話した音の聞き方や現場での判断が混ざり合いながら、その日その現場で決めていくポジションです。
配信の裏側にはこういう役割もあるんだ、と知ってもらえたら嬉しいです。

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社員プロフィール

写真右-藤田 雅洋(Masahiro Fujita): フリーランス期に大手放送局スポーツ中継等の現場にてリプレイヤースキルを習得。その後ゲーム配信番組運営を経て2018年ウェルプレイド(現GLOE)入社

写真左- 横田 侑紀(Yuki Yokota):学生時代から RIZeST(現GLOE)の現場にテクニカルオペレーターとして参加。2025年GLOE入社、イベントプロダクション事業部でディレクター実務を担当。

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